原作妄想語り -ゲンサクモウソウカタリ-

比較的真面目に考えた(7)

(7)平田寛氏翻訳のカッコよさにシビれながら、K・セリグマン『魔法-その歴史と正体』に潜む「悪魔くん」要素を堪能しよう。(2022.11.05/2023.01.21加筆)

タイトル長い。(判りやすさを優先しました)
【最初に】
※『魔法-その歴史と正体』は現在入手しやすい平凡社ライブラリー版(2021年)を参照元とする。
※セリグマン原文は Kurt Seligmann『The history of magic』(1948年)を参照元とする。
原文翻訳は、DeepLとGoogle翻訳を使用し、両方のニュアンスの近い部分を拾って意味が通るよう再構成したものである。
※各『悪魔くん』参照元単行本は、私物からすぐ出してこれた分で引っ張ってきたものである。…大全集で統一すればよかったね…ページ数を目安に各自お手持ちの書籍で確認してください。お手数をお掛けします。



「悪魔くんのネタ元になった書籍」と知ってからどうしても手に入れたくて、やっとセリグマン『世界教養全集20 魔法-その歴史と正体』(1961年)を手に入れて、最初に「うわーっ!これぇーー!!」…とひっくり返った内容は何か。

→「ファウスト博士の魔法の円と杖」の図。杖がそのまんま「ソロモンの笛」。


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /図135 ファウスト博士の魔法の円と杖/416P

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /Fig.130. Circle and Wand of Dr.Faustus/298P


多分、所謂ハリポタ的使用感の杖イメージなんだろうな、とは思うんですが本当に「笛」にして大正解だったと思います。音が鳴る設定があると玩具にしやすいもんな…埋れ木アニメでオカリナ型になったの、あまりに形がそのまんますぎてヤバかったからかもしれないと思った事もありましたが(実際は棒状武器玩具を避けたのかもしれない。判らない。でも戸田松岡と埋れ木のお陰でオカリナには愛着があるよね水木クラスタ)。とにかく「元ネタがあったんか…!」と驚いて、これだけでもう「この本が読めて本当によかった…!」と感動してしまった当時。 他にも沢山「ここ、悪魔くんに出て来たヤツだ!」な箇所があってニコニコしちゃう『魔法-その歴史と正体』ですが、それを見つけるにつれて「…これは平田寛氏の翻訳センスが素晴らしい、という点に着目すべきなのでは…?」と思いました。翻訳ひとつで全然ニュアンスが違ってきますからね!
「エロイムエッサイム」ひとつとっても、澁澤龍彦版だと「エロヒムよ、エサイムよ、わが呼び声をきけ」となっていますが、セリグマン→平田寛翻訳版はお馴染みの「エロイム、エッサイム、われは求め、訴えたり」であり、この「わが呼び声をきけ」と「われは求め、訴えたり」のニュアンス差はとても大きく、個人的印象でも「悪魔くん」の作品内容そして最初のメシア・松下一郎の人格設定的に後者の方が合っている…と思えるのです。

というか「我は求め訴えたり」ですよ??「求め訴えたり」
…なにその言い回し~!カッコイイじゃ~~~ん!!!(軽い)

カッコイイな!という視点で改めて平田寛翻訳『魔法-その歴史と正体』を読むと、「これはカッコイイわ…」とワクワクしちゃう呪文がことごとく「悪魔くん」本編で使用されていて、御大のチョイスセンス~!!!とニヤけてしまう訳ですよ。

【1】「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /414P
  つぎの呪文をとなえる。「エロイム、エッサイム、われは求め、訴えたり。」
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /294P
  the words: “Eloim, Essaim, frugativi et appelavi”
 

→基本のキですね。この呪文は3メシア全タイトルで使われているので比較等は省略します。
【脱線】呪文「エロイム〜」が使われた作品として「悪魔くん」と並んで挙げられる事の多い『魔界転生』、こちら実は山田風太郎原作(1964年/連載時タイトル『おぼろ忍法帖』)では「エロイム〜」の呪文は出てきません(もっとエグイ術で甦ってくる)。1981年、深作欣二監督により映画化された際に「ラスボス: 天草四郎(沢田研二)」「ジュサブローデザイン衣装」とセットで盛られた映画独自設定であり、これのインパクトが強すぎたために今も語り続けられています。確かにカッコイイので…後、もうあんな撮影(城をセットで組んでマジで燃やしながらスタント無しで一発本番撮影)実行出来ない。昭和映画の無茶ぶりが堪能出来るので未視聴な人、視聴チャンスがあったら是非。


【2】「万人の父の名のもとに行なうわが要求にこたえよ」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /423P
  「朽ちはてし遺体よ、眠りから覚めよ。遺体より踏み出て、万人の父の名のもとに行なうわが要求にこたえよ」
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /305P
  "May he who is dust wake from his sleep. May he step out of his dust and answer to my demands which I will make in the name of the Father of all men."(自動翻訳:「塵である者が眠りから覚めますように。塵から出て、万人の父の名において私の要求に答えてくださいますように。」)
 
→「May he who is dust(直訳:塵である者)」が「朽ちはてし遺体」。カッケェ…後半のdustでも「遺体より踏み出て」と受けて、「わが要求にこたえよ」と強めに締めるの完璧じゃないです?

で、これが「悪魔くん」本編内ではこう使われ変化しています。

松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)257P
  朽ち果てし大気の生霊よ 眠りからさめよ 気体より踏みいでて 万人の父の名の下に行なう わが要求に答えよ!!


松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)64P
  くちはてし遺体よ ねむりからさめよ! 遺体よりふみいでて… 万人の父の名の もとにおこなう わが要求にこたえよ!

松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)253P
  くちはてし大気の生霊よ! ねむりからさめよ! 気体よりふみいでて… 万人の父の名のもとにおこなう わが要求に答えよ!


山田(マガジン版):悪魔くん(全)ちくま文庫 16P
  くちはてし大気の精霊よ! 万人の父の名のもとに行なう わが要求にこたえよ!


山田(実写):オープニング歌詞 一部抜粋
  地の底よりふみ出でて 我が聖なる要求に答えよ

山田(実写):1話メフィスト初召喚時の呪文 一部抜粋
  くちはてし大気の精霊よ 万人の父の名のもとにおこなう 我がもとめにこたえよ


埋れ木(ボンボン版):悪魔くん3 扶桑社文庫 184ページ
  くちはてし大気の精霊よ 万人の父の名のもとにおこなう わが要求にこたえよ!


松下:悪魔くん世紀末大戦(光文社コミックス)25ページ
  朽ち果てし大気の精霊よ 眠りからさめよ 気体より踏みいでて 万人の父の名の下に行なう わが要求に答えよ−−−っ!!


山田(ノストラ):水木しげるのノストラダムス大予言(上)扶桑社文庫 16ページ
  朽ち果てし大気の聖霊よ 万人の父の名の元におこなう我がもとめに答えよ
(※水木しげる漫画大全集のみ「聖霊」が「精霊」と修正されている。)

山田(ノストラ):水木しげるのノストラダムス大予言(上)扶桑社文庫 26ページ
  棺の中に 眠らるる わが偉大なる 王よ ながき眠りから めざめさせたまえ 遺体より 踏みいでて 万人の父の名のもとにおこなう わが要求にこたえよ!


→「踏み出て」を「踏みいでて」と開いた御大、最高ですね…!
本来は死者を呼び出す呪文なので千年王国でのふくろう女を探すシーンと、ノストラの死神伯爵がシーレンを復活させるシーンではそのまま「遺体」が使用されています。というか「遺体より踏みいでて」を唱えてる死神伯爵が例外すぎる…シーレン召喚呪文前半部分、あちこち調べてみましたが現時点で元ネタを発見する事は出来ず、シーレンに合わせた創作呪文と思われます。山田の初召喚シーン直後にあり、山田と似た呪文が再度登場する事で印象が強くなってて効果的。
→悪魔召喚シーンでは3メシアで「大気の生霊」「大気の精霊」とバリエーションがあり、「大気の聖霊」はノストラ辰巳出版・扶桑社文庫限定。漫画大全集で何故か「大気の精霊」に訂正されています。「聖霊」、山田(実写)版オープニングにある「聖なる要求」を上手い事採用したっぽさあるな…いいじゃん…特別感もあるしハルマゲドンに挑むメシアっぽい。とひっそりお気に入りポイントだったので「何で訂正されちゃったんだろう…普通にミスだったのかな…?」と思っています。もしくは他2メシアと共通設定に合わせたか。
「要求」の前に「聖なる」という文言が入る事があるのも山田実写版オープニングとソノシート版のみになります。実写本編では出てこない。はず。多分。「聖」どこから沸いた…?(だから「わが性なる要求にこたえよ〜♪」とかジャストフィットなパロディにされちゃったんじゃん…!/※アクメくんOP)

 

【3】「陰気なる住家を立ち去りて、三途の川のこなたへきたれ」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /422P
  「天地万物を混乱におとしいれる地獄の魔ものよ、陰気なる住家を立ち去りて、三途の川のこなたへきたれ」
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /305P
  "Infernal powers, you who carry disturbance into the universe, leave your somber habitation and render yourself to the place beyond the Styx River."(自動翻訳:「地獄の力よ、森羅万象を乱す者よ、陰鬱な住処を離れ、三途の川の彼方に身を委ねよ。」)
 
→前半部分を纏めて更に肉付けして「天地万物を混乱におとしいれる地獄の"魔もの"よ」としてるのスッゲェー!ってなったポイントです。「universe=天地万物」もいい。
→後半「render yourself to the place beyond the Styx River.」も凄い。まず意味が真逆(「川の"彼方"に身を委ねよ」→「川の"こなた"きたれ」に変化)になり、「Styx River.(ステュクス川/※ギリシャ神話の三途の川みたいなヤツ。カロンの渡し守でお馴染み)をジャパニーズにイメージしやすく直球「三途の川」とした点もキレッキレである。
平田翻訳で「川の向こう」から「川のこちら側」となる事で、偶然?にも召喚呪文に転用しやすい形になっていると思います。

「悪魔くん」本編内でも、平田翻訳ほぼそのままの形で確認出来ます。

松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)265P
  天地万物を 混乱におとしいれている 地獄の魔ものよ 陰気なる住家を 立ち去りて 三途の川の こなたへきたれッ!!


松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)259〜260P
  天地万物を 混乱におとしいれてる 地獄の魔物よ! 陰気なるすみ家を たちさりて… 三途の川の こなたへきたれっ


松下:悪魔くん世紀末大戦(光文社コミックス)27ページ
  天地万物を 混乱におとしいれている 地球の魔物よ 陰気なる住み家を 立ち去りて 三途の川の こなたへ来たれっ!


→「三途の川のこなたへきたれ」。…カァ~ッコイイ~~!!!(ヒュゥッ!!!)
御大が「おとしいれる」をそのまま使用しなかったのは何かこだわりがあったんだろうか?「おとしいれて(い)る」、声に出して読むと微妙に言い辛い気がする。後、世紀末大戦だけ「地球の魔物よ」となっていてスケールアップしている事に気がついた。確かに地獄以外の場所にもいるかもしれないもんな、魔物。
この呪文はファウスト博士の台詞で、本編内では松下版にしか使用されていません。(山田版では別途本編外で長呪文の一部として使用掲載されている)平田寛独自翻訳部分と言って差し支えないであろう「こなたへきたれ」のフレーズがSUKI…

 

【4】「現世は夢になり、夢は現世になる」


魔法-その歴史と正体 / 改革者たち/秘密団体 /605P
  ノヴァーリスは「現世は夢になり、夢は現世になる」といっているが、これは、ローゼンクロイツの神秘な旅を想起させるための言葉ではなかろうか。
 

The history of magic / REFORMERS - Secret Societies /448P
  Does not Novalis evoke the mysterious travels of Rosencreutz when saying "World becomes Dream, and Dream the World"?(自動翻訳:ノヴァーリスは「世界は夢となり、夢は世界となる」と言いながら、ローゼンクロイツの不思議な旅を思い起こさせたのではないだろうか。)
 

" World becomes Dream, and Dream the World "?
「現世は夢になり、夢は現世になる」
そっか~!なるほどな~~~???原文は素直に「World」だったんだ~…!よくこれに「現世」という言葉をあてたな…あの世とこの世の概念前提じゃないと出てこないと思うんですがむしろ逆で仏教概念がプリインストールされたジャパニーズだからこそさらっと訳せたのかもしれない…ですね…前世現世来世。
後、江戸川乱歩の「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」もヒントにした可能性もなくはないかも…?乱歩もいいよね…これ、平田寛氏は「げんせ」「うつしよ」どちらの読みのつもりだったんだろう?

これが、御大の手により予想外のバリエーションを生んでいます。


松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)144P
  万人が兄弟となる王国が現れる。「現世は夢となり夢は現世となる」といった。

松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)268P
  現世(げんせい)は夢になり 夢は現世(げんせい)になる


松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)206P
  万人が兄弟となる王国があらわれる…「現世は夢となり 夢は現世となる」といった!

松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)262P
  現世は夢になり 夢は現世になる!


山田(マガジン版):悪魔くん(全)ちくま文庫 32P
  現世(うつしよ)はゆめとなり ゆめは現世(うつしよ)となる!


山田(実写):1話
  現世(げんせ)は夢となり 夢は現世(げんせ)となる


埋れ木(ボンボン版):悪魔くん3 扶桑社文庫 184ページ
  現世(げんせ)は夢となり 夢は現世(げんせ)となる


松下:悪魔くん世紀末大戦(光文社コミックス)27ページ
  現世(うつしよ)は夢となり 夢は現世(うつしよ)となる ああ…


※これもファウスト博士の台詞=ノストラのみファウスト博士未登場のため無し。「悪魔くん」における最高の名台詞(キャッチコピー)なのにね…
メシアによって「現世」のルビの有無、読みが異なっているのが大変興味深いです。貸本(1963年)→マガジン版(1966年1月1日号-)→実写(1966年10月-)の間で都度変化している目まぐるしさも、山田がマガジン版と実写で異なってるのも面白い。(時代と媒体差、出版社の都合もありそうな気がします)個人的には「うつしよ」派ですね…やっぱりね…難しい言い回しの方がなんか中二カッコイイじゃないですか。


【5】「われなんじをもとめあうことをえん」「なんじがここにきたれるはうれし」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /423P
  […]そのあと、北に向って正確に五九〇〇歩だけ離れた所で、大地に横たわり、手は脚の上におき、目は月のかかる天の方向に向ける。この姿勢で、「われはなんじを求め、見ることを得ん」と唱えながら死者を呼びだす。幽霊は、いちはやく現れるだろう。そして、「選民の王国にもどれ。なんじがここにきたれるは、うれし」という言葉を唱えると、消えさる。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /305P
  Afterwards, walking towards the north and having made exactly four thousand and nineteen hundred steps, he lies down upon the ground, outstretched, his hand on his legs, his eyes raised to heaven in the direction of the moon. In this position, he summons the deceased, saying: "Ego sum, te peto et videre gueo." The specter will appear readily. It is dismissed with the words: "Return to the Kingdom of the chosen. I am happy about your being here." Leaving the spot, the necromancer returns to the grave, where his experiment began, and with his left hand he traces a cross upon the stone.(自動翻訳:その後、北に向かって歩き、ちょうど四千と千九百歩を歩いたところで、地面に横たわり、体を伸ばし、手を足の上に置き、目を天に向けて月の方角に向けます。この姿勢のまま、故人を呼び出す「Ego sum, te peto et videre gueo.」と唱えるのです。幽霊はすぐに現れます。そして 「選ばれし者の王国へ帰れ。あなたがここにいることをうれしく思う。」という言葉とともに退散させられる。)
 

→まず、「われはなんじを求め、見ることを得ん」の翻訳からキレッキレです。
原文は「Ego sum, te peto et videre gueo.」ですが、おそらく…ラテン語…?ざっくり意訳で「私はあなたを求めています、あなたに会いたいです。」というニュアンスになる所を「我(われ)」「汝(なんじ)」「見ることを得ん」ときている。「見ることを得ん」…!(カッケェー!!!)
→そして「選民の王国にもどれ。なんじがここにきたれるは、うれし」です。
冒頭の「選民の王国」も大概ですけどまぁここは近いニュアンスを拾ってるので意訳という程ではないと思いますが、後半の「I am happy about your being here.」を「なんじがここにきたれるは、うれし」ですよ。「ここにきたれるは、うれし」。あれですよね、「もろびと こぞりて」の歌詞の「久しく待ちにし 主は来ませり」うわ~カッケェ~っ!ってなるヤツに近いですね。(※個人差はあります)


松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)65P
  これから 北にむかって 正確に 五千九百歩 あゆむ……
われ なんじを もとめ あうことを えん!!
われ なんじを もとめ あうことを えん!

松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)66P
  われ なんじを もとめ あうことを えん!!
これで 五千九百歩 です!
よし
「ふくろう女」よ なんじが ここに きたれるは うれし!


→ふくろう女を甦らせる際に使われたので、千年王国限定になります。
「北に5900歩」までドンピシャで、読んだ時「うっひょぉ~!!!(喜)となったのを覚えています。
平田寛氏訳の「見ることを」から「あうことを」にアレンジされた事により、対象を甦らせる感が強まっていると思います。また、本来は呼び出した死者を帰らせる際の「選民の王国にもどれ」部分を切って最後の決め呪文にしてるのもイイ。そもそも帰らせる気が無いもんな。

【6-1】「魔法陣を作ることは どちらかといえばむずかしい作業である…」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /417〜418P
  魔法の円をつくることは、どちらかといえばむずかしい作業である。それは、金属板を切り取ってつくらなければならない。そして金槌で一打することに、「悪霊や悪魔に負けずにつよくなれ」といわなければならない。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /299P
  The making of the circle is rather difficult: it has to be cut out in sheet metal. With every stroke of the hammer, one has to pronounce: "Made strong against all evil spirits and devils." (自動翻訳:円を作るのはかなり難しく、板金で切り取る必要があります。 金槌を一打するたびに、「すべての悪霊と悪魔に対して強くなった」と宣言しなければなりません。)
 

【6-2】「中央の三角形は、絞首台からとった三つの鎖でつくり…」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /418P
  中央の三角形は、絞首台からとった三つの鎖でつくり、打つ釘は、車裂きの刑や他のおそろしい刑に処せられた犯罪人の額に突き刺した釘でなければならない。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /299P
  The triangle in the center has to be formed by three chains taken from gibbets and nailed down with those nails that have gone through the forehead of executed criminals, who were broken upon the wheel, and other such horrors.(自動翻訳:中央の三角形は、絞首台から取った3本の鎖と、死刑囚の額を貫いた釘、車輪の上で折られた釘、その他の恐怖の釘で作らなければならない。)
 

【6-3】「指一本でも入れるとその人はズタズタに寸断されてしまうから…」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /409P
  安全な円のなかに静かに立っていることができないで、魔法の線から指一本でも出たりすると、その人はずたずたに寸断されてしまうだろう。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /290P
  if the conjuror cannot stand quietly in his protective circle, if he allows only a finger to trespass across the magic line, he will be torn to shreds.(自動翻訳:魔術師が保護サークルの中に静かに立つことができず、魔法の線の向こうに指一本でも出ることを許せば、ズタズタに切り裂かれることになる。)
 

・「魔法陣」から悪魔を召喚する描写は水木しげるが最初だった?西洋魔術をはじめ興味深い考察が展開される(2017年1月12日)
・召喚されたものが『魔法陣』から出てくるのは水木しげる御大の考案?「西洋では術者を守る結界」(2021年7月1日)
・魔法陣 -wikipedia-
→ネットで不定期に話題になる「魔法陣の中に悪魔を召喚する、というのは水木しげるが考えた」説の流れにもなる部分ですが、セリグマンは「魔術師が魔法陣の中に立ち、円から外に出るとズタズタになる」と書いていているんですね。平田寛氏も「円の外に出るとズタズタになる」と翻訳しています。ここで書かれている「魔法円」は「protective circle」魔術師を「守る」ためのサークルである事が判ります。

【6-4】「太陽が地平線から登るまでに 呪文をとなえなければならない」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /409P
  しかも、太陽が地平線からのぼる瞬間に切りとらなければならない。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /294P
  and it must be cut at the very moment when the sunrises over the horizon.(自動翻訳:そして、日の出が地平線に昇るまさにその瞬間に切り取らなければなりません。)
 
→この箇所は「これだ!」…と断言出来るレベルの一致ではないので出典元というには根拠に欠けますが、ファウスト博士の悪魔召喚解説シーンの台詞部分の出典元がセリグマンの同ページ内に集中している点、同じように「~なければならない」で締めている点など、表現的に参考にした可能性は高いと思われます。

四ヶ所まとめた形になりますが、本編内でも長い悪魔召喚方法の説明で使用されています。

松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)252〜254P
  魔法陣を作る ことはどちらかと いえばむずかしい 作業である
一センチに 一声ずつ エロイム、エッサイム をとなえなければならず
  中央の三角形は 絞首台からとった 三っつの鎖で 作り
打つ釘は 車裂きの刑 やその他 おそろしい刑に 処せられた 昔の犯罪人の 額に突き刺した 釘でなければ ならない……
魔法陣のの 線に指一本 でも入れると その人はズタズタに 寸断されてしまうから 気をつけねば ならない
  太陽が地平線から登るまでに 呪文をとなえなければならない


松下:悪魔くん千年王国第1集(講談社)249〜251P
  魔法陣を つくることは どちらかといえば むずかしい作業で ある……
一センチに ひと声ずつ エロイム エッサイムを となえなければならず……
中央の三角形は 絞首台から とった 三っつの鎖で 作り……
うつクギは 車裂きの刑や そのほか おそろしい 刑にあった むかしの犯罪人の額に つきさした クギでなければ ならない
魔法陣の の線に 指一本でも いれると その人間は ズタズタに 切断されて しまうから 気をつけなければ ならない
太陽が地平線からのぼるまでに 呪文をとなえなければならない
 

山田(マガジン版):悪魔くん(全)ちくま文庫 26P
  魔法陣を作るのは むずかしい作業と いわねばならぬ
一センチに 一回ずつ エロイム エッサイム をとなえねばならぬのじゃ
魔法陣の 内側の線に 指一本でも入れると その人は ずたずたに 寸断されてしまう 気をつけねば ならん


松下:悪魔くん世紀末大戦(光文社コミックス)24〜25P
  魔法陣を作るとき 常にエロイムエッサイムを唱えなければならない……
魔法陣のに 指一本でも入れると ズタズタに寸断される……
太陽が地形線から昇るまでに 呪文を唱えなければならない

→ファウスト博士の魔法陣講座台詞なので、これもノストラには存在しません。博士未登場なので。
世紀末大戦版はダイジェストなのもあって説明のボリュームも半減しています。故に「削ぎ落とせなかった重要な箇所が残されている」とも言えると思います。
千年王国版、台詞自体は同じでも多くの箇所で漢字を開いて印象が変わっています。後、語尾の「……」がすごい効いてる。対して山田(マガジン)版ファウスト博士が最初から「おじいちゃん"のじゃ"口調」になっているの逆にレアだな…埋れ木版でもアニメは最初からおじいちゃん口調だけどボンボン版初期のファウスト博士の口調結構荒々しいもんな。山田(マガジン)版は「太陽が地平線からのぼるまで」の時間制限と鎖と釘の存在が無かった事に、埋れ木版はこの辺の設定丸ごとオミットされました。(そりゃそう)
→御大が魔法円を独自解釈したものを「魔法陣」と呼び、ここまで文面が一致している中で「魔法陣の内(中)」「入れる」と明確な意図を持って『魔法-その歴史と正体』の内容を逆転させたとおぼしき痕跡が見て取れる、大変重要な引用箇所かと思います。(※元々「魔法陣(magic square)」という名称は存在していたが全く異なる物を差す。)


【7】「エロイムエッサイム(悪魔召喚長呪文バージョン)」

特殊例になるので、先に『悪魔くん』内の呪文を見てみます。一応、自分で書き起こしました…
参考:エロイムエッサイム - ねこまくら(2013年3月19日)


山田(実写):主題曲ソノシート/悪魔くんの呪文(書き起こし)
  エロイムエッサイム エロイムエッサイム 我は求め訴えたり
朽ち果てし大気の精霊よ 万人の父の名の下に行う我が聖なる要求に応えよ
エロイムエッサイム エロイムエッサイム イン・ゲ・トゥ・イン・ゲ・シ・サン・ミム・タ・チュ
地獄の犬よ 永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ
悪魔の怨霊(おんれい)の大群のただ中に雄々しく立てる我を見よ
天地万物を混乱に陥れる地獄の魔物よ 陰気なる住家(じゅうか)を立ち去りて 三途の川のこなたへ来(きた)れ
汝もしも我が呼ぶ人を意のままになし得(う)るならば 乞う 汝が百王の王の名において彼を我が指定する時刻に出現せしめんことを
朽ち果てし遺体よ 眠りから覚めよ 遺体より踏み出(いで)て 万人の父の名の下に行う我が要求に応えよ
太陽の門の開くのを待ち 北へ五千九百歩進んで地に伏し 手を足に重ねて 我は汝を求め見ることを得んと唱えよ

→長い!山田版限定のすっごい長い悪魔召喚呪文です。
ソノシート版、先に出典元を知っていないと音を拾う作業では意味が取りにくい箇所が結構あって、数ヵ所曖昧なままになってます。「行う」の音は「おこう」寄りですね。(これはドラマ本編内でもそう)全文セリグマンで出来ています。順番に見ていきたいと思います。(先に引用した分は『魔法-その歴史と正体』該当部分のみとします…)

・「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /414P
  つぎの呪文をとなえる。「エロイム、エッサイム、われは求め、訴えたり。」
 

・「朽ち果てし大気の精霊よ 万人の父の名の下に行う我が聖なる要求に応えよ」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /423P
  「朽ちはてし遺体よ、眠りから覚めよ。遺体より踏み出て、万人の父の名のもとに行なうわが要求にこたえよ」
 
→意外?にも1番使われている箇所。(ソノシートでは単語を差し替え2回使用されています)

・「イン・ゲ・トゥ・イ・ゲ・シ・サン・ミム・タ・チュ」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /418P
  そのあいだに、「イン・ゲ・トゥ・イ・ゲ・シ・サン・ミム・タ・チュ」という叫びが混ぜられる。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /299P
  but are intermingled with exclamations: "yn ge tu y ge sy San mim ta chu."(自動翻訳:しかし、その中には叫び声が混じっている。「地獄の猟犬よ 永遠の天罰を受けよ」)
 
→ "yn ge tu y ge sy San mim ta chu." が自動翻訳されてビックリしましたが何語認定されたんだろう…

・「地獄の犬よ 永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ 悪魔の怨霊の大群のただ中に雄々しく立てる我を見よ」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /418P
  「地獄のイヌよ、永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ、悪魔の怨霊の大群のただ中に雄々しく立てるわれを見よ」
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /299P
  "Hound of hell, Spirit, precipitated in the abyss of eternal damnation; see me standing courageously amidst the hordes of devilish furies,"(自動翻訳:「地獄の猟犬、魂、永遠の呪いの深淵に沈められ、悪魔のような猛獣の大群の中で勇ましく立つ私を見よ」)
 
→「Spirit(魂・精霊)」の行き場の解釈に迷うやつですね…

・「天地万物を混乱に陥れる地獄の魔物よ 陰気なる住家を立ち去りて 三途の川のこなたへ来れ」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /422P
  「天地万物を混乱におとしいれる地獄の魔ものよ、陰気なる住家を立ち去りて、三途の川のこなたへきたれ」
 
→これも、平田寛氏は「じゅうか」「すみか」どちらの読みのつもりだったんだろう?(御大は「すみか」派だけど、山田実写ソノシート版だけ「じゅうか」なんだよな…)

・「汝もしも我が呼ぶ人を意のままになし得るならば 乞う 汝が百王の王の名において彼を我が指定する時刻に出現せしめんことを」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /422P
  「なんじもしわが呼ぶ人を意のままにしうるならば、乞う、なんじが王のなかの王の名において、彼をわが指定せる時刻に出現せしめんことを」
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /305P
  "If you hold in your power him whom I call, I conjure you, in the name of the King of Kings, to let this person appear at the hour which I will indicate." (自動翻訳:「もしあなたが、私が呼ぶ者をあなたの力で捕らえられるなら、 王の王の名において、私が指定する時刻にこの者を出現させるよう命じます」)
 
→ソノシート版、「the name of the King of Kings(王のなかの王の名)」を「百王の王の名」にしたのぐっと来ますね。百王。偶然か、意図されたのか、『百王』とも呼ばれるグリモワール(Centum Regnum)があるらしいですね。

・「朽ち果てし遺体よ 眠りから覚めよ 遺体より踏み出て 万人の父の名の下に行う我が要求に応えよ」


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /423P
  「朽ちはてし遺体よ、眠りから覚めよ。遺体より踏み出て、万人の父の名のもとに行なうわが要求にこたえよ」
 
→2回目。こちらは1回目と違い、セリグマン本文内呪文を一言一句そのまま使用。

・「太陽の門の開くのを待ち 北へ五千九百歩進んで地に伏し 手を足に重ねて 我は汝を求め見ることを得んと唱えよ」

魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /423P
  そして「太陽の門が開く」まで、こうしていなければならない。
[中略] そのあと、北に向って正確に五九〇〇歩だけ離れた所で、大地に横たわり、手は脚の上におき、目は月のかかる天の方向に向ける。この姿勢で、「われはなんじを求め、見ることを得ん」と唱えながら死者を呼びだす。
 

The history of magic / DIABOLIC RITES - Black Magic /305P
  Thus he must remain until the "gates of the sun open." (自動翻訳:このように、彼は「太陽の門が開く」まで滞在しなければならない。)
[中略] Afterwards, walking towards the north and having made exactly four thousand and nineteen hundred steps, he lies down upon the ground, outstretched, his hand on his legs, his eyes raised to heaven in the direction of the moon. In this position, he summons the deceased, saying: "Ego sum, te peto et videre gueo."
 
→この「北へ」「5900歩」も調べだすと無限に時間が溶ける(…5900歩?という根本的な話)ヤツなんですが、今回はノータッチとします。

本編外で生まれた長呪文、まさかの山田専用ポジションとして再び登場します。
そう、ノストラです。


山田(ノストラ):水木しげるのノストラダムス大予言/タツミコミックス版/巻頭カラー口絵
  エロイムエッサイム
エロイムエッサイム
われは求め訴えたり
朽ち果てし大気の精霊よ
エロイムエッサイム
エロイムエッサイム
イン ゲ トウ イ ゲ シ サン
ミム タ チュ
地獄の犬よ、
永遠なる呪いの深淵に転落せる精霊よ
悪魔の怨霊の大群のただ中に
雄々しく立てる
われを見よ
天地万物を混乱におとしいれる
地獄の魔物よ
陰気なる住みかを立ち去りて
三途の川のこなたへ来たれ

→ノストラ版で「万人の父の名の下に行う我が聖なる要求に応えよ」の一文がざっくり消えました。後、末行から3行(「汝もしも~」から「~得んと唱えよ」まで)もざっくり消えましたが、「悪魔を呼び出すものではない」部分でも特に呪文らしくない所を削ったのだと思われます。
ソノシート版長呪文、御大はノータッチでドラマスタッフ内で「魔法-その歴史と正体」片手にツギハギして作った可能性濃厚なのでは…?という予感もあります。(オープニングの「タマハリ タムハリ カピオラス」部分も収録時の超即興で後から書き起こしで歌詞にしたと聞きましたがホントですか?)それを後に同じ山田版という事でノストラの口絵に転用したのかも…??
なんにせよ、上から下までたっぷりセリグマン&平田寛氏翻訳引用で構成されたカッコイイ呪文です。「三途の川のこなたへ来たれ」で締めるの、わかるわかるぞ~!カッコイイもんな!!(ノストラ口絵を眺めつつ笑顔)

※2022/12/17 追記
実写版のオープニングに関する記述があった冊子が本棚から出て来たので引用しておきます。
(他にもCDのライナーノーツとかで取り上げられているらしいです)

ぼくらが好きだった特撮ヒーローBESTマガジン VOL.8 /早川優の音楽コラム『悪魔くん』テーマ曲の秘密/11P
  作曲はテレビ音楽の異才・山下毅雄で、平山亨プロデューサーが水木しげるの協力を得て収集した悪魔召喚呪文を、録音現場でのアドリブで詠唱させたもの。
 
…これはほぼ確実に、御大経由でセリグマン『魔法』が呪文参考文献として渡ってますね。純度高い長呪文をありがとう…!

個人的に「三途の川のこなたへ来たれ」のフレーズが大好き!という主張が強いだけの無駄に長いテキスト、以上になります…。
本文だけでなく「ファウスト博士の魔法円と杖」のように、他にも図を参考にして描かれた本編内作画もいくつかあります。軽く抑えて締めにしたいと思います。

→ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ著『化学の結婚』

魔法-その歴史と正体 /改革者たち/ヴァレンティン・アンドレーエ /図251『化学の結婚』初版本のページ(1616年、シュトラスブルグ)/598P

松下:水木しげる貸本漫画傑作選12 悪魔くん(上)2巻中表紙絵(1616年に刊行されたアンドレイエの魔術書の一頁)/257P


画像引用:Chymische Hochzeit,Christiani Rosencreütz(英題:Chymical Wedding of Christian Rosenkreutz)/97ページ - OPEN LIBRARY(Internet Archive)
ドンピシャ(死語)1616年版がインターネットアーカイブで確認出来る、本当に良い時代になりました…。
こちらも「あっ!これ元ネタだ…!」と判るレベルの図だと思います。見比べると判るんですが、貸本版該当ページの方はこう…下半分に書かれた呪文の5行目を丸々飛ばして描いてあったり、ふんわりした引用の仕方というか、いい塩梅の参考の仕方だな…と思います。


→アグリッパの偉大な魔法の円


魔法-その歴史と正体 /「悪魔の儀式」黒い魔術 /図133 アグリッパの偉大な魔法の円/415P

山田(実写):全編で使用されている魔法陣


個人的に、漫画版&平成アニメ版の魔法陣はThe Magic Ring or Disc of Solomon(ソロモンの魔法の指輪/盤)が元ネタ派」なんですが、実写版に限っては明らかに「アグリッパの魔法円」からデザイン流用されています。実写、呪文といい魔法陣といい、マジで上から下までたっぷりセリグマンで出来てるぞ!(嬉)細かい数字配列やデザインは弄ってありますが、派手なデザインの魔法円、画面映えするしグッドチョイスだと思います。実際『魔法-その歴史と正体』には他にも魔法円の掲載はあるんですが、これが1番カッコイイんですよね…
※ソノシートのおまけ?に魔法陣が描かれているものが封入されているんですが、そちらのデザインは本編中のものとまた少し異なっています。

画像引用:Les oeuvres magiques de Henri-Corneille Agrippa: avec des secrets occultes, notamment celui de la Reine des Mouches velues(1744/Henri Corneille Agrippa)/16ページ - Googleブックス
※2023/01/21 追記修正:参照リンク先を間違えるというあるまじきミスを2ヶ月半放置していました。馬鹿…!

…ところでこの魔法陣、セリグマンでも澁澤龍彦でも「アグリッパの魔法円」として紹介、掲載されているんですがおそらくどちらも同じソース元から引っ張ってきてると思われます。完全同一図なので。ところがこの魔法円、いざ『The history of magic』『黒魔術の手帖』以外で掲載されているものを探そうとするとなかなか見つからないんですよ。意外と。ゼロではないんですが。載っていても違うスタイルの図である事が多く、「もしかして…この魔法円、主流の形では…ないのか…?」と真顔になった過去があります。頼みのウェイトですら別スタイルの魔法円だった。
同じタイトル、内容の本でも先に間違って引用リンクしていた1547年版だと魔法円のスタイルが異なるんですよね…(同じものではある。描いた人が違うよね、みたいな意味)。その上この『Les oeuvres magiques de Henri-Corneille Agrippa』、アグリッパもアバノのピエトロも無関係な本らしくて何…誰が書いたのこれ…となっています。(確実にアグリッパ絡みの本からはこの形の魔法円が見つからない…)